運転免許証とちがって、パスポートは有効期限が近くなってもお知らせが来ない。前回、10 年前のときはギリギリになって気がついて、あわてて更新したのである。それもたまたま出張の必要があったから気がついたんであって、出張がなければ気がつかないで失効してた。そういうわけで今回は万全を期して更新に臨んだ。はずだったのだが。
これからパスポートを更新される方は、ここに書かれている情報を鵜呑みにしてはいけない。願わくは必ず国や自治体が出す一次情報を参照され、穴のあくほど念入りに確認されんことを。
さて、長野県のホームページをチラ見したところ、申請書と顔写真と今持っているパスポートと、更新手数料 6,300 円が必要という。申請書は窓口で書けばいい。今はオンライン申請というのがあって、手数料がいくらか安くなるのだが、私の所有するスマホは旧型のためマイナなんとかアプリの動作対象外であった。パソコンはそもそもシステム上利用対象外という仕様であり、私はこのオンライン・システムから完全にハブられていることがわかった。
というわけである日、散歩のついでに市役所に行き、売店で国の収入印紙 4,000 円分と長野県収入証紙 2,300 円分、都合 6,300 円分を購入、その足で窓口に行って更新を願い出たのだが、係りの人がいうには手数料は 6,300 円 じゃなくて 16,300 円ですよと。定かではないが、初めてパスポートを作ったときの手数料が 15,000 円くらいだったと記憶している。いくらなんでも高くねえかと思ったのだが、面倒だったので、それでいいですと答えて渡された書類に記入を始めた。
ところが今度は、申請書に「本籍」を記入する欄があるので困った。だいたいはわかるのだが、細かい番地までは覚えてなかった。先ほど来、なんかいちいち思いどおりにいかないし、まわりが騒がしくて係の人の説明がろくすっぽ聞き取れないしでイライラが募り始めたのである。「ここはいったん頭を冷やそう」ということで、本籍を調べて出直しますといって市役所を出た。
さて、商店街の一画の、自販機があってベンチに座れる場所で一服して冷やした頭で考えるに、当面海外に行く予定なんてないし、金欠だし、なんなら今後一生行くこともないかもしれない。そう考えると、無理に更新する必要もないのではなかろうか?コロナ禍では約 3 年間にわたり、この伊那谷の狭くて細長い土地から一歩も出ずに過ごしたが、もともと引きこもり気質なもので、まるで不都合を感じなかった。どこか旅行したくなったら国内だっていいし (高知の宿毛はよかったなあ)、どうでも必要になったらそのときに新しく作ればいい。そう考えたら、帰宅したらなんで 6,300 円じゃなくて 16,300 円だったのか調べなくちゃと思っていたのもどうでも良くなってしまった。それに、こう考えることもできはしないだろうか?浮いた金が 6,300 円ではなく 16,300 円に増えたのだと。そのお金で飲みに行くことだってできる。
問題は、現金をすでに収入印紙と収入証紙に代えてしまったことである。帰宅してすぐにパソコンを開いてネットで調べると、国の収入印紙は金券ショップで買い取ってもらえる由、都道府県の収入証紙のほうも、県の合同庁舎の会計センターという所で払い戻してくれるとのことであった。
翌日さっそく、近くの金券ショップに行って国の収入印紙 4,000 円分を 10 パーセントオフの 3,600 円で買い取ってもらった。ちなみに都道府県の収入証紙も買取りはできるが、もとの値の 3、4 割くらいになってしまうといわれた。だから合庁の会計センターで払い戻してもらったほうがよい。ただしやむを得ず払い戻していただくに至ってしまった事情などを書類に書く必要がある。指定の銀行口座に振り込まれるので、通帳も必要だ。それから領収書もあったほうが話が早いが、私は持参するのを忘れてしまった。
ついでに後日、本稿を書くために、なぜ私は更新手数料の金額を間違えてしまったのか?を確認したところ、本来は「一般旅券発給申請」という欄を見なければいけなかったのだが、「残存有効期間同一旅券等」という欄を見てしまっていたのであった。皆さんもよくよく気をつけていただきたい。
とにかくこれで私はパスポートを失い、代わりに 16,300 円から収入印紙の 10 パーセント分を引いた 15,900 円が手元に残ったのであった。
(でもまた新規で申請し直すことになったら、余計に手数料がかかることになるんだが、それでも浮いたといえるだろうか?)
私はこのお金を飲み代としていつもの焼き鳥屋に行くとしよう。
(ゆっくり旋回しながらヒースロー空港に降りていく飛行機。眼下に広がるロンドンの街並み、機内ではシンディー・ローパーの「タイム・アフター・タイム」が流れていた…)
ここは焼き鳥屋なのに、店長が気まぐれで出すラタトゥイユが激ウマなのだ。
(ニューヨーク、39 ストリートにあるホテルのバーの、ナイスガイなお兄さん、元気かな?)
いまだと野菜タンメンがうまい。白く輝くスープに、よく火の通った野菜がこれでもかと乗っている。満腹になったあとでは完食できないから、早めにオーダーしなくては。
(台湾、道路を埋め尽くすスクーター、新北市の郊外にひっそりたたずむ廃映画館…)
海外に行けなくったって私はしあわs
あー!パスポートが失効した記念に、今までに旅行した街のことを書いてやる!そのうち!